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| Profile:佐々木 寿人 (ささき ひさと) |
1977年1月12日生まれ。仙台出身。フリー雀荘のメンバー、フリーで打ち続けるストリート系雀士を経て、一転、2006年から日本プロ麻雀連盟に所属する麻雀プロに。
鳴き、リーチを縦横に駆使し、対戦者にプレッシャーをかけ続ける超攻撃的な雀風が特徴。歌舞伎町などが主な主戦場。
近代麻雀に連載された『真剣−実録!!フリーで1,000万貯めた男−』のモデル。今最も注目される若手雀士。 |
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第9回
『目的』
麻雀は覚え立てが一番強い。ここ数年ずっと感じていたことだ。歳月を重ね、知識を身につけていくうちにずるさもおぼえていく。皆そうだ。
誰かを真似て、上手になろうと日々努力する。僕にもそんな時代があった。勿論のことだが、覚え立てにはそれがない。脇目も振らず、絵を合わせてひたすらアガることに必死である。
タダみたいなレートだから、放銃への恐怖心など少しもない。アガることに対する追求心だけで言えば、この時期がやっぱり一番強い。
1)            (ドラ )
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八月上旬、東京での生活に飽き飽きして、僕は仙台に帰った。久しぶりに会った友人達と昔話で盛り上がる。
ホームセンターで木片と釘を買って、自分達で雀卓を作った思い出や、僕が徒然草を真似て記した雀々草という麻雀日記の話題で持ちきりだった。
どんな内容だったかは、まるで覚えていないが、当時から何かを書き記すクセがあったらしい。学生時代、毎日のように入り浸ったアパートの主Kが最近引っ越した際に見つけたそうだ。
あれから十年が過ぎようとしている。今の自分があるのも、毎日のように嫌がるアイツらを巻き込んだからだ。“感謝しろよな”と1人が言った。そうだよなぁと忘れていた感情が込み上げてくる。
“2、3回でいいから付き合ってくれよ、俺らもプロと打ってみてぇしさ”と言われるとさすがに断り辛く、「何度も言わせんな、アマチュアだって俺は。じゃ、4回だけだぞ」
そういって懐かしい記憶を蘇らせる時間が始まった。
“リーチッ!”Uが自信満々に発声した。Uは目がすこぶる悪い。自分の手牌もろくに見えない。増してや河の牌なんかまるで見えるわきゃない。手牌は先ほど紹介した
九巡目、1)            (ドラ )
の手牌だ。辺膨れの と のシャンポン、場には が一枚と がニ枚飛んでいる。すげぇリーチだ。待ちが一枚もねぇ。
目を皿のようにして皆の打牌を追うU。まあ出るわけもツモるわけもないのだが、ニ種類の牌を念ずるかのようにツモる指にも力が入っている。“なんだか高そうだな、おい。”Kが言う。そりゃこの時はまだUの手が見えないんだから、そう映るわな。 |
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Uが一発目に持って来たのは 。下家のMが  でチー。そしてUのツモ切った でロン。
         (チー  、ロン 、ドラ )
“うぁー、ちょっと待ってくれよ、こっちは三色だぜー”手牌をあけるU。両面に変わったことには一切気付いてない様子。Uの手牌と河を見て、一気に吹き出す我ら。
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「それ、待ちねぇぜ。」“えぇっ、あっ!ホントだ…”しかしこの瞬間、僕の胸にはある感情がこみあげてきた。この姿勢が大事なんだよな、この真直ぐな一生懸命さを失ったら終わりだろうなと。
例えば僕らには相手に打たされるリーチがある。枚数がなくシャンポンに受けざるをえない両面嫌いのリーチや、染め屋に打ち辛いがための仕方ない同色のリーチなどだ。
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Uにはそんなのないんだろうな。八枚切れていたって 待ちはそいつでリーチなんだろうな。最近は素人から学ぶことのほうが多くなった気がする。僕がいつまで経っても愚形リーチが減らないのも、覚えた頃の気持ちを大事にしているからだ。
十年が過ぎ、麻雀の腕がちっともあがっていなかったUにそれを再認識させてもらい、感謝の一日だった。
三日後、僕は都内で麻雀を打っていた。メンツもレートも仙台のとは比べものにならない。十ニ回の決めでの十回戦目、ラス前、南家十一巡目
            (ツモ 、ドラ )
1人が50000点を超える持ち点。僕は30400点持ちでハネ満を引いたってトップには届かない。オーラスがあるじゃないかと思われるだろうが、1人が残り1100点で飛び寸。
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そして場況がまた悩ませる。 がすでに4枚、 が1枚飛んでいる。Uならそんなことはお構い無しに 切りのリーチだろう。僕もそうだ。しかしここでずるさが顔を見せる。 |
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上家の直前の 切りが、明らかなペンター外しと見てとれたからだ。僕は 切りのリーチと出た。上家はまだ17400点持っている。ここから一発で5200点をアガれば、ラス親は4000オールで逆転というわけだ。
正直自分だってこんなリーチを打ちたくはないが、相手にキズがあるならしょうがない。一発目は現物をツモ切られ、目論みは外れたが、2600点を上家から出アガりなんとかトップ狙いの延命はできた。
だが、僕は一発で を引いていた。後悔がなかったとは言わない。ただ、麻雀という目に見えない要素が多い博打においては、確実な情報は大切にしなければならないと考える。
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| 『目的』は楽しむことではない。そんな時代はとうに過ぎた。トップをとれずとも、ウマの大きい場ならニ着で十分ということだってある。確実に勝ちを積み重ねること、それだけを考えながら、あっという間に十年が過ぎた… |
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